彫刻家 - 塩見真由
形のないものを形にすることに取り組んでいます。わからないことを積極的に受け入れて、ふくよかな空間をつくり出すために彫刻をつくる、作品は有限を超えた世界へ接続する表現を見つけるための総括的なメッセージです。ふくよかな空間について、余白・間、のようなものとして捉えているため、言い換えれば私は余白を彫刻しているのです。
私の作品は日本の宗教美術、アウトサイダー・アート 、そしてポップ・アートからインスパイアされています。日本では彫刻という概念の代わりに、森羅万象への畏敬の念から神道や仏教による礼拝の対象としての石の動物の像や木や鋳物の仏像があり、今もそれらは土地と人々に根付いています。そのアニミズムの持つ霊的エネルギーと、デフォルメされた形は私の造形表現の軸となる感性であり、アウトサイダー・アートの純粋なエネルギーと近代美術へのリスペクトを昇華させたポップ・アートから刺激を受けています。
表現の動機となる出発点、アウトサイダー・アートからの大きな影響により絵画を学んだ後、彫刻を専門分野として学びました。自分が自分をつくっているもの、古代から人が考えてきた人間の存在をテーマに研究を始め、空間における物体のエネルギーの源を探りながら形のないものを形にするため、人物の具象彫刻を学ぶことから彫刻家としてのキャリアを始めました。
その後、既製品と既成概念を取り巻いている人間 -「既製品の神話」というテーマを軸に様々な素材と媒体を通して表現を展開してきました。一見して表面的に一貫性のないモチーフと素材を完全に同等に並べることにより、多様性による平等性ということを提示し、それにより作品は現実との大きな違和感を生み出します。この制作と活動では、現代美術のひとつの文脈であるイギリス発アメリカで発展した1960年代のポップ・アート、戦後の日本とアメリカの歴史的な関係性の研究は作品の要素を成すひとつでもあります。私は日本のバブル経済期に生まれたロスト・ジェネレーション世代であり、日本とアメリカの国際関係により、アメリカから入ってくる大量の物品や情報と共に成長しました。作家の基盤となっている古典と現代美術の狭間で彫刻家としての10代を歩んできましたが、それらは全て必要な時間でした。
私の作品はアウトサイダー・アート、ポップ・アートと現代美術彫刻を横断します。近年は作品をより深く掘り下げて、無もなく空もなくただそこにある、という仏教の言葉を手がかりに作品の存在に意識を向けて制作しており、より普遍性を持った形とそれを取り巻く空間表現と手で考える原初的なモデリングの技術、そして元々自然界にある再生可能な素材研究、また、彫刻を空間に配置するにあたり関わりを持つ建築、家具に必然と関心を向けていることから、ジャパンダン(ジャパン×モダン)という独自のキーワードが核となる記号的な彫刻と、サイト・スペシフィック・アートへ制作を展開して活動に取り組んでいます。